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掲載日:2012/4/28

どこでもくっつけるわけじゃない

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インフルエンザウィルスと言えば、まず連想するのが呼吸器系だと思います。また、ノロウィルスと言えば、小腸なんかの消化器系を連想すると思います。
「ノロウィルスが喉に感染した」とか、「インフルエンザウィルスが肝臓に感染した」 なんて話は、聞いた事がないのではないのでしょうか?
どうやら、「ウィルスによって、感染する部位が決まっている」みたいですよね?
いやそもそも、普段そこまで意識しないかもしれませんけど(汗;
今回は、「どのウィルスが、どの場所に感染するか」 に関するお話です。
細かい所まで書き始めるときりがないので、例によって 「だいたいこんなもん」 という感じで読んで下さいな♪
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スパイクと感染部位
ウィルスとスパイク
まずは、左の図を見てください。
ウィルスの表面に、棒と言うかトゲというか、そんなものがありますね。これは 『スパイク』 と呼ばれます。
(『スパイクタンパク質』と表記されている場合も多いです)

今までなんで書いていなかったかというと、描くのが面倒くさい むやみやたらと色々書くと、ごちゃごちゃしてしまって判りづらくなるせいです。
※インフルエンザウィルスのスパイクは2種類あるのですが、これまたごちゃごちゃしてくるので、割愛させて頂きます^^;
※ノロウィルスについては…色々と調べてみたのですが、スパイクがあるのやらないのやらはっきりしません。 ノロウィルスはカリシウィルス科ですが、そっちもはっきり書いてるところがないですし(あるっぽい書き方をしている所は散見されるのですけど…見つけきれてないだけ?)。
まぁ、説明が面倒くさくなるので、なければないで、「便宜上、スパイクで説明している」とでも思ってください。
スパイクと宿主細胞への吸着
さて、この 『スパイク』 は、何のためのものなのでしょうか?
宿主となる細胞の表面には、「でこぼこ」(※)があると思ってください。
これは本来、栄養素なんかがはまるためのものです。
ウィルスのスパイクも、同じかたちをしています。 これによって、宿主細胞にくっつくわけです。
※詳しく知りたい方は、『受容体(レセプター)』等に関して調べてみて下さい。
スパイクの違いと感染部位
でも、この『でこぼこ』は、どこの細胞でも一緒なのでしょうか?
もちろん、部位によって違ってきます。それが、ウィルスの感染部位に関係してきます。



例えば、

喉の細胞の 『でこぼこ』
・インフルエンザウィルスのスパイクには合う
・ノロウィルスのスパイクには合わない
小腸の細胞の 『でこぼこ』
・ノロウィルスのスパイクにはかたちが合う
・インフルエンザウィルスのスパイクには合わない
と言う事が出来ます。

このせいで、ウィルスが感染出来る部位は限られてきます。

言い換えれば、
ウィルスが感染出来る部位は、
スパイクと『でこぼこ』のかたちが合う部位だけ(※)
と言えます。
※強毒性ウィルスは、全身のあらゆる部位に感染するので 『強毒』性なのです。
予防/対抗手段とそのしくみ
ウィルスが宿主細胞へ感染する際に重要な役割を果たすスパイクですが、逆に言えば、「スパイクをどうにかしてしまえば、感染出来なくなる」 という事にもなります。

このセクションでは、スパイクに関連した予防/対抗手段 を少し紹介しましょう。

ウィルスのスパイクを破壊してしまう方法
ウィルスのスパイクは特定のタンパク質でできていますから、それを壊してしまったり、別のものをくっつけてしまったりする事で無力化できます。

薬品によって化学的に破壊したり、電気的に叩き壊してしまったりします。
前者はいろんな消毒薬、後者は、空気清浄機の機能としてついていたりしますね。
スパイクを切り離せなくしてしまう方法
こちらについては、ウィルスの遊離に関する説明が必要ですね。

宿主細胞に吸着するのに重要な役割を果たすスパイクですが、これ、宿主細胞内で増殖したウィルスが、外に出る時にもくっついてしまいます。
ウィルスは、そういった場合にスパイクを切り離す機能を持っています。
でも、スパイクを切り離す事が出来なくしてしまえば…?

スパイクが宿主細胞にくっついたままになってしまい、ウィルスは宿主細胞から離れる事が出来なくなってしまいます。

この発想によるお薬が、『タミフル』 や 『リレンザ』 です。
(どちらも、2009年の新型インフルエンザ流行の際に有名になりましたね。 処方された知り合いの話によると、「本当に、めちゃくちゃ効く!」との事でした)

この発想によるお薬は、性質上、感染・発症してしまった後の対処薬ですね。
※詳しく知りたい方は、『ノイラミニダーゼ阻害』 等について調べてみて下さいな♪
おわりに
以上、ウィルスのスパイクと、その性質を利用した対抗策について簡単に説明させて頂きました。
ウィルスは宿主細胞の性質を上手く利用していますが、対抗策もウィルスの性質を上手く利用しているわけです。
とは言え、普段こんなこと、全く意識なんかしていないとは思いますが^^;
あと、ウィルスのタイプと予防 等でも書いていますが、
いくら予防策や対抗策をとっても、それが間違っていたら、てんで効果がない
例えば、インフルエンザウィルスのスパイクを破壊するようなお薬を飲んだとしても、感染しているのがライノウィルスやアデノウィルスだったら意味がないです^^;(全てに効果があるお薬なら、話は別ですけど)

このあたりは、気に留めておくといいかもしれませんね♪
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