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掲載日:2012/5/7

傷ついちゃったらぶちまける

今回は、 『細胞の死』 についてのお話です。

「細胞の死」と書くと、なんだか干からびちゃうような印象がありますが(そう思うのはわたしだけ?)、2種類の 『死』 があるのはご存知でしょうか?

いつもの事ですが、「まぁこんなもん」 な感じで話を進めて行きたいと思います。
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大きく分けて2種類の『死』
2種類の死があると言っても、おそらくぴんと来ないのではないでしょうか?
細胞が死ぬ要因としてすぐに頭に浮かびそうなのが、「寿命が来て死んだ」 と、「何らかの要因で破壊された」 の2種類だと思います。
実際、この2ケースが大まかな死因となりますし、なんだかどっちでも同じようなものですが…実は、この二つには、大きな違いがあります。
前者はいわば 『自然死』 で、これを 『アポトーシス』と呼びます。後者は 『ネクローシス』 です。
以下のセクションでは、それぞれどんな違いがあるのかについて、少し詳しく説明して行きましょう。
アポトーシス −立つ鳥あとを濁さず−
まずは、『自発死』 とも言える 『アポトーシス』 からです。
「あれ? 『自然死』じゃなかったっけ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、寿命が来た際も、「自発的に」死んでしまいます。
細胞は、その中に色々な物質を持っていますよね。
でも、死んでしまった場合、その物質はどうなるのでしょうか?

アポトーシスした場合は、それらは他の細胞が使用可能なかたちに加工されて放出されます。

いわば、「きちんと身辺整理をした後に」 お亡くなりになるんですね。

アポトーシス以外にも、「細胞の自発死」は存在します。
その場合、より広い概念として、『プログラム細胞死(PCD)』が使われます。
※詳しく知りたい方は、『タイプ1〜3プログラム細胞死』 について調べてみて下さい。

ネクローシス −周りにとっては大迷惑−
今度は 『ネクローシス』 です。 よく、「細胞が傷ついた結果死んだ時」 という言われ方をしますね。
『壊死』 とほぼ同じ意味と言っていいと思います。

結論から言うと、ネクローシスした細胞は、中身を周りにぶちまけて死んじゃいます。
これだけだと、大した事ではないように思えますが…例えばリソソーム(※)は消化酵素を持っていますし、老廃物なんかもあるでしょう。
ネクローシスした細胞は、そういうものを始末するヒマもなく死んでしまうわけですから…
そんなものまで、周囲にぶちまけてしまいます。

とてもじゃありませんがいい影響のなさそうな代物をぶちまけるわけですから、周囲の細胞に悪影響を与えます。

この結果、 『炎症』 が発生します。
※リソソーム(lysosome)
: ライソソーム・ライソゾーム・水解小体(すいかいしょうたい)とも呼ばれます。 内部に加水分解酵素を持つ、細胞内の消化器官です。
発生してしまった炎症は、免疫系が始末しに来ます。
アポトーシスいろいろ
ここまで、『アポトーシス』 と 『ネクローシス』 ついてそれぞれ見てきましたが、アポトーシスはどんな時に起こるのでしょうか?
自然死以外のアポトーシスについて、いくつか見てみましょう。
発生・成長過程
カエルって、オタマジャクシからカエルになる途中で、しっぽがなくなっちゃいますよね。
あれ、アポトーシスによるものなのです。
生物の体は、アポトーシスによる『−』によってもかたちづくられているんですね。
本来とは違う場所に行ってしまった時
ある組織の細胞が、なにかのきっかけで 「自分がいるべきでない」 場所に行ってしまった時は、アポトーシスして消滅します。

これは、体細胞を元にしているガン細胞ですら例外ではなく、ガン細胞ですらアポトーシスするそうです※。
それが別の部位に転移するプロセスは、今のところよくわかっていないそうです。
※ 他の部位に転移するガン細胞は、1万個に1つと言われています。 免疫機構とアポトーシスをかいくぐっている事を考えると、これでも相当確率が高いような…?
ウィルスに感染したとき
細胞がウィルスに感染してしまった時、感染された細胞は対抗手段を取ろうとします。
その一つがアポトーシスです。

ここで上手くアポトーシス出来ればいいのですが…ウィルスの方も、対抗手段として、アポトーシスを阻害する物質を持っていたり、宿主細胞に生産させたりします。

アポトーシスに失敗した場合、増殖したウィルスが完成してしまう上、宿主細胞はネクローシスしてしまいます。
『暴走した』 アポトーシス
今までのアポトーシスは体に害をおよぼさないものでしたが、これはちょっと違います。
例えば狂牛病では、脳の細胞が死滅してスポンジ状になってしまいます。
この原因とされる 『異常プリオン(病原性プリオン)』 ですが、これはアポトーシスを誘発する物質なのだそうです (詳しいところは、まだ判っていないそうですが…)。

「本来あるべきではない」 アポトーシスと言えます。
以上、アポトーシスの例をいくつか挙げてみました。
興味がある方は、『タイプ1〜3 プログラム細胞死』と、その違いについて調べてみるのも面白いかもしれません。

おわりに
この記事を置いている場所が 『フィールドに出る前に』 という事を考えると、またもや完全にぶっとんでる内容でしたが…感染症等に関する事を書くと、ネクローシスへの言及が必要な事が時々出てきます(実際、『んなもんさっさと出しちまえ!』 で少し言及していますしね)。

「炎症を起こした部位や傷では、何が起こっているか?」 を理解したり、状態を把握したりする助けにはなるのではないかと思います。

概念自体は、そんなに難しい話ではないですしねw
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