キクザキイチゲの『イチゲ』ってなに?
キンポウゲ科イチリンソウ属

キクザキイチゲ

キクザキイチゲ

撮影日:2006年5月3日
撮影地:芦津渓(鳥取県)
大学生時代、鳥大生研で以下のような会話がありました。

先輩 :「昨日のフィールドノート、間違っとるのがあったぞ」
わたし:「え、どれですか?」
先輩 :「キクザキイチゲの事、キクザキイチリンソウって書いてあるぞ」
わたし:「あ、それですか?キクザキイチリンソウって、キクザキイチゲの別名ですよ」
先輩 :「む!そうか、それは知らんかった」

『キクザキイチゲ』 は、 『カタクリ』 と同じような所に群生し、八重咲きの鮮やかな花を咲かせます。
『キクザキイチリンソウ』 は同じ植物を指す名称なのですが、どうやら 『キクザキイチゲ』 という名称の方が一般的のようです。 『キクザキイチリンソウ』 という名を併記しているものは、あまりお目にかかった事がありません。
確かに、八重咲きの花は 『イチリンソウ』 とはだいぶイメージが違いますから、全然違う種類の植物と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。 個人的には、葉っぱがイチリンソウとそっくりなので、キクザキイチリンソウの方が好きなのですが…。
(手持ちの写真には開花途中のものしかなかったため、八重咲きの様子が伝わりにくいかもしれません><)

イチリンソウ

イチリンソウ

撮影日:1997年5月
撮影地:鳥取県福部村岩戸
実は、この 『イチゲ』 という名前、どういう意味なのか以前から気になっていました。
同じように 『イチゲ』 と着く植物は、 『アズマイチゲ』 、 『ヒメイチゲ』 がありますが、いずれもキンポウゲ科で一輪咲きです。 また 『イチリンソウ』 も、その名の通り一輪咲きの花です。
そういうわけで、『イチゲ』は「一輪咲きの花を示す言葉なんだろうな」と、漠然と思っていました。 とはいえ、何を調べれば裏が取れるか判りませんでしたので、特に調べていませんでした。

それが、たまたま由来が判りました。 小学館の 『野草の覚え方』 に 『アズマイチゲ』 と 『キクザキイチゲ』 の区別の仕方が書いてあったのですが、そこに併記されていた漢字名は『菊咲一花』。なるほど、『イチゲ』=『一花』で、『一輪』草なわけです。 漢字名一つで、今までの疑問が氷解しました。

植物の名は、図鑑等ではカタカナで表記されている場合が多いです(このHPでもそうしています)。 これは多分、植物の名前には出所のはっきりしていないものがあって、ヘタに漢字名で表記出来ないせいでしょう。
例えば、このコーナで紹介した 『ホタルブクロ』 は、由来が 「ホタルを中に入れて遊んだ」 だと思っている人は 『蛍袋』 と表記するでしょうし、「火垂(提灯)に似ている」 と思っている人は 『火垂袋』と表記するでしょう。 それ以前に、『オケラ』なんかは完全に出所不明だそうですし。
でも、わたしとしては、漢字名で書くメリットの方が大きいと思います。 名前そのものが由来を示してくれる事が多いので、 「へぇ!」 と思うことも多いですし、何より印象に残ります。

そういうわけで、 「今後このHPでも出来るだけ漢字で表記しようかな」 と 『野草の覚え方』 をぱらぱらめくっていたのですが、 『オオイヌノフグリ』 の所で手が止まりました。
…やっぱり、基本はカタカナ表記にしておきましょう (この植物の名前の由来を知っておられる方には、どういう事か判ると思います。 漢字表記は相当強烈ですから)。
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