蛍袋? 穂垂る袋?

 「ホタルブクロ」という名前を聞いて、一番最初に何を連想するでしょうか? おそらく、『蛍』ではないかと思います。 実際、よく知られているのが、「中に蛍を入れて遊んだことから、この名前がついた」という話です。 確かに、中に蛍を入れるにはちょうど良さそうな形をしていますし、やってみたらきれいだろうなぁ、と思います。

 でも、この花の名前、別のところから来ているという説もあります。
以前立ち読みした「植物の名の由来」(立ち読みだけに、出版社も著者も覚えてません(^_^;)では、「蛍袋」ではなく「穂垂る袋」であろうと書いてありました。 理由は確かこんな感じです。
 ”この場合の名前の由来はこうである。「昔、子供が蛍を捕まえたが、入れるものがないので、 目に付いたホタルブクロの花の中にいれて持って帰った」という。しかし、ホタルブクロの花は闇夜に目に付くような色ではない。 故に、この説は間違いといえるだろう。「ホタル」は、穂が垂れ下がっている花の様子を指しているのだろう”
だそうです。
 わたしはこの文を読んだとき、「はてな?」と思いました。「穂垂る」のところはともかく、「ホタルブクロの花の色って、薄闇なら結構目立つんじゃ? 完全な闇夜ならともかく」と。
この文章を読んで下さっている方の中には「そんなことないだろ」と思う方と、「あれが目立たないんなら、どんな花も目立たない」と思う方がいるんじゃないかと思います。
 それで、「なんでかなぁ?」と考えてみたところ、はたと気付きました。そういえば、ホタルブクロの花って、『紫』なんですよね。 わたしが見慣れたホタルブクロの花は、この写真のように白色です。

ホタルブクロ

ホタルブクロ
撮影日:1995年くらいだったと…
撮影地:白兎海岸あたり(鳥取県)
大学の頃いた鳥取のホタルブクロはこの色ばっかりで、紫のものは花壇に植えてあるものしか見たことがありません。 しかし、『日本の野生植物(平凡社)』や『日本の野草(山と渓谷社)』には、ホタルブクロの写真は紫色のものが載っていますし、 「白のホタルブクロは見たことがない」という話も何人かから聞いたことがあります。紫の方が多いのでしょう。
(鳥取の隣の島根県でも、紫ばかりらしいです)
とはいえ、「花の色には紅と白がある」と明記されていますから、白の所も結構あるのでしょう。広島では白だそうですし。

 と、話が思いっきり逸れたので、元に戻しましょう。
ホタルブクロの名前の由来についての、わたしなりの考えはこうです。
ホタルブクロは各地の山野に普通に見られる花なので、多くの呼び名があります(トッカンバナ、チョウチンバナなど。 あと、写真を見た人が「地元の方で”アメフラシ””アメフラソー”と言っているものによく似ている」、と言っていましたが、 これも多分ホタルブクロの一地方名でしょう)。そのなかで、白い花の地方の子供が、前に書いた「ホタルを中に入れて遊ぶ」 ことをやってこの名がついた話が広まり、最も一般的な名前になった、とは考えられないでしょうか?

 とかなんとか言ってみたものの、「日本の野草」で調べてみたら、「提灯を意味する”火垂る袋”によると言われる」 と書いてありました。うーん、これが一番説得力あるなぁ・・・。
 見た目が提灯に似ていて、中にホタルなんか入れたら(白い花のものは)、まさしく提灯でしょう。
 「蛍袋」と「火垂る袋」、実は由来が一緒と思うのは、わたしだけ?

(でも、やっぱり花の色は白になっちゃうんですよね、どっちの説でも)
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