図鑑の選び方に使い方

■本当は、詳しい人に教えてもらうのが一番いいのだけど・・・。

 いきなり冒頭でこんなの言っちゃうと身も蓋もないのだが・・・結論からすると、一番いいのはやっぱりこの方法。詳しい人はちゃんと『何処に目を付ればいいか』把握しているので、ポイントを教えてもらうのが一番いい。
 それに、図鑑のみで検索出来るようになるには、結構時間がかかるものだし・・・。(僕自身、1年くらいかかっている)

 とはいえ、身の回りに詳しい人がいない場合、どうしても1から始める事になるので、僕なりの図鑑の選び方や使い方を書いてみます。まぁ、結局は合う合わないの問題なので、参考程度に(^^;


■用途に応じて選んでみる −とりあえず、1冊選んでみよう−


 1から植物を始める場合、同定(種類の判別)は結局は図鑑に頼るしかない。というわけで、図鑑がなければ始まらない。
 とはいえ、適当に1冊選んでみて、使いにくかったら話にならないので、よくありそうな用途別に図鑑選びのポイントを挙げてみまいした(まぁ、山菜とかだと、専用の図鑑がたくさん出ているので、特に気にすることもないかもしれないが)。

用途 向いている図鑑 主に目を付けたいポイント
1.
山野草についていろいろ知りたい!
・山野草系の図鑑
・花期別の草花図鑑

  • 写真が判りやすい
  • 生えている所を説明している
  • 花期が載っている
 判りやすい写真を使っているのが一番かな?
2.
山菜をやりたい!
 そのものずばり、
山菜系の図鑑

  • 全体像・特徴が判りやすい写真を使っている
  • 芽の状態の写真も載っている(芽の時期のものを食べるものが多いため)
  • よく似た毒草を比較説明している
  • 生えている場所を説明している
 山菜系の図鑑は上記ポイントを網羅してくれている事が多いので、そんなに気にする必要はないかも。
3.
何でもかんでも同定したい!
『日本の野生植物』系や、『日本の野草』系の、
なんでもかんでも載ってる図鑑

 『葉による検索図鑑』なんかもあると嬉しい。

  • 写真が判りやすい
  • 網羅している種類が多い
  • 検索が出来る
  • 説明文が詳しい
 フィールドに持っていきたいのなら、上記に加えて・・・。
  • サイズが手頃
  • 頑丈(または、堅いカバーがついている)
 趣味で植物をやる場合、この用途で図鑑を使う人は少ない気もするけど・・・。

 1.や2.はともかく、3.については、必要な点を全てカバーしている図鑑もそうそうない。となると・・・。


■メインの目的が同定なら、検索可能な図鑑を中心に

 同定が主な目的で図鑑を買う場合、自ずとモノは定まってくる。
 やはり、お勧めしたいのは『日本の野生植物』。この図鑑は非常に強力な検索支援機能を持っており、手がかりがない場合にかなりの威力を発揮する。僕はここ数年、この図鑑を使っていないのだが、手元に検索可能な図鑑がないため、さすがにそろそろきつくなってきた。

 この『日本の野生植物』、強力な検索支援機能を持っているため、手放しでべた褒めしたいところなのだが、載っている写真が最悪という、かなりたちの悪い欠点を持っている。写真と説明が分かれていると言う点も、初めて使う場合は戸惑うと思う。

 こんな感じで、良い点を持っているのに、総合的に見ると欠点が見えてきてしまう図鑑はごまんとある。逆に、そうでない方が珍しい。しかし、『日本の野生植物』のように、強力な検索支援機能を持っている図鑑もそうそうないので・・・。
 「じゃあ、他の図鑑と組み合わせて使えばいいじゃない!」と思ったアナタ!正解です!


■『1冊の図鑑で全てをカバー』はきつい −数冊組み合わせて使った方が−

 結論から言えば、複数の図鑑で欠点を補い合う方法が一番いい。
 それに、『日本の野生植物』のように、検索の出来る図鑑はそうそうないのも事実。

 というわけで、『日本の野生植物』を例に取って、複数の図鑑を組み合わせる使い方を説明してみます。
 用途を『なんでもかんでも同定したい』とした場合、まず『日本の野生植物』の良い点と悪い点を挙げると・・・。

『日本の野生植物』の良い点 『日本の野生植物』の悪い点
1.検索能力に優れる

この図鑑には検索表がついていて、全く知らない植物でも1から検索出来る(ちょうど、検索エンジンで条件を絞り込んで行くような感じで検索可能)。そのためには、「羽状複葉」だとか、「対生」だといった専門用語をある程度覚える必要があるが、各用語の説明は図入りでちゃんと載っているから、覚えたくなければ覚えなくてもいい。この図鑑の最大の利点はここだと思う。

2.載っている植物の種類が豊富

『日本の野生植物』と着いているくらいだから、相当な種類を網羅している。しかしこれは、「同じようなものがいくつもあるせいで、どれだか判らずパニクりやすい」という欠点にもなるのだけど・・・。

1.必要最低限の事しか書いていない

豆知識的なことは全くと言っていいほどなし。学術目的に使用するのならともかく、興味を惹くような文では・・・(思い出してみると、この「あまりにも素っ気なさ過ぎる」がきっかけで、『植物よもやま話』始めたんだった)

2.写真が悪い

はっきり言って終わってます。しかも、植物1種類に対し1枚。改訂前の記事にこれを書かなかったのは僕の完全なミス。検索を進めていっていざ写真を見てみると、「ホントにコレか?」と首を傾げたくなるものがかなり多い。

3.値段が高い!

僕としては、ここが一番の問題と思う。本格的にやりたい人とか、かなり植物に思い入れがある人ならともかく、フィールド版でも\7,800・・・普通、出した手が引っ込む。

 ちなみに、僕はこの図鑑を「サイズが手頃(英中和辞典くらい)」だと思っていたのだが、「鳥装備などと一緒に持っていくのはかなり苦痛」との指摘もいただいたので、これについては利点にも欠点にも挙げないでおく。
 まぁ、自分としては欠点をさっ引いても最強の図鑑と思っているのだが、確かにシャレにならない欠点ばかりではある(--;

 なんにせよ、欠点が挙がった事で、どんな図鑑でそれを補うべきか見えてきた。とはいえ、欠点の3.はどうしようもないので、1.と2.を補う図鑑を考えてみる。となると、「写真がよくて、ちょっとした豆知識も書いてあるような図鑑」という像が浮かんでくる。
 じゃあ、『日本の野草』(山と渓谷社)あたりが適当か?(実を言うと、僕がメインに使ってる図鑑はコレ)

 実際に欠点を補い合っているかどうか、『日本の野草』が補っている点と補われている点を挙げてみよう。

『日本の野草』が補っている点 『日本の野草』が補われている点
1.説明文が無味乾燥なものばかりではない

説明文は結構詳しく書いてあるし、メジャーな植物については豆知識的な事が書いてあることも多い。これは、『日本の野生植物』の欠点1.を補っている。

2.写真がいい

全体的に、ぱっと見て判りやすい写真を使っている(たまに、花がメインで、葉っぱの様子が判らないものもあるが・・・。)。これは、『日本の野生植物』の欠点2.を補っている。

1.検索能力が殆ど皆無

全く知らない植物を検索しようとすると、「こんなんで、総当たり以外にどうやって検索せれちゅうんじゃぁ!!」と言いたくなるか、途方に暮れる。ここは、『日本の野生植物』の利点1.が補ってくれている。

 こうしてみると、二つの図鑑は結構いい感じで欠点を補い合っている事がわかる。こんな感じで欠点を補い合える図鑑を組み合わせる事が出来れば、一番いいのではないだろうか?
 まぁ、複数の図鑑を組み合わせて使う場合、要となるのは検索能力だと思うけど。

 余談になるが、『日本の野草』の普通版(?)は、とてもフィールドに持っていく気にはならないくらいばかでかいが、フィールド版もあるそうだ。


■図鑑に限らず、別のものを見てみるのも意外といい

 ちょっと話が横道に逸れるが、植物の事を知ろうとした場合、図鑑以外にもいい書物はたくさんある。
 例えば、小学館のフィールドガイドの『野草の覚え方』。この本は、特徴をよく掴んだ写真を載せていて、豆知識や、似ている植物の見分け方も豊富に載っている。僕としてはかなりお勧めしたい書物だ。
 植物関連の書籍は無味乾燥なものが多いと思っていたが、意外と面白いモノはあるものである。


■終わりに


 改訂前の記事では、図鑑1冊に絞った場合はどれがいいかという観点で『日本の野生植物』をべたぼめしていたけれど・・・鳥大生研時代の偉大なる先輩、うりゃさんから、この図鑑の『恐ろしい欠点』と、「図鑑は1冊でなくてもいいのでは?」との指摘があったため、大幅に記事の内容を改訂してみた(そもそも前の記事は、図鑑を1冊に絞るのか、数冊組み合わせて使うのかをはっきりしていなかった点が最大のミス)。これで、少しは初心者にも判りやすくなっているといいのだけど・・・。


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