冬虫夏草フィールドに出る前に > 抗生物質は何に効く?
掲載日:2012/5/6

抗生物質は何に効く?

これまでは主にウィルスに関してのお話をしてきましたが、今回は 『抗生物質』 についてのお話です。

抗生物質の名前自体はわりとよく聞くと思いますが、そもそもコレ、何に対してどのように効いているのでしょうか?

いつもかつもですが、「まぁこんなもん」 な感じで話を進めて行きたいと思います。
Contents(ページ内ジャンプ)
このエントリーをはてなブックマークに追加
そもそも『抗生物質』って何?
そもそも、『抗生物質』の定義は一体どうなっているのでしょうか?
Wikipediaの 『抗生物質(Antibiotics)』 の項の初っ端に書いてある事を引用すると、
基本的に「微生物の産生物に由来する化学療法剤」のことを「抗生物質」と言う。
…わかったような、わかんないような?

抗生物質にも色々種類がありますし、まずはその辺りを簡単にまとめてみましょう。
ざっくりと書けば、左の図のようになります。
大半が 『抗菌薬』 ですので、抗生物質は 「微生物由来で」「菌に対して作用するもの」 と捉えておけば、大間違いではなさそうです。
その他にも、坑ウィルス薬 ・ 坑真菌薬 ・ 抗がん剤もあるようです。

というか、ぶっちゃけわたしは…
今まで 『抗生物質』 = 「抗菌薬しかない」と思ってて、 この記事を書くにあたって調べてみたら、 思いっきり顔が引きつった
わけですが(汗;
まぁ、大半が抗菌薬なわけですし、そこに焦点を当てて話を進めていきましょう。
抗生物質のやってるコト
一般的に、『抗生物質』は『抗菌薬』の事を指します。
この記事では、特に明記しない限り、『抗生物質』 は『抗菌薬』 を指していると思ってください。

さて、抗生物質はどんな事をしているのでしょうか?
その辺りについて、ざっくりと説明して行きましょう。

わざわざ書くまでもない事ですが、細菌は細胞分裂によって増殖していきます。

※上の図の細菌には 「核がある」 ように見えますが、細菌には核はなく、核酸が露出した状態で存在します。いやまぁ、その状態の核酸、書くのがめんどくさかったので…(汗;
※記事中の『細菌』は、『真性細菌』を指していると思ってください(用語を統一して書いてるつもりですが、時々見落としていますので(汗;)。
ちなみにウィルスの場合、増殖の仕方はこんなレベルじゃありません。
(宿主細胞の中で、とんでもない数のウィルスが作られるわけですから)

まぁ、ウィルスの事はここではどうでもいいので、細菌の話に戻りましょう。
抗生物質は、細菌が細胞分裂する際の代謝過程に作用します。


要するに、増殖する時のプロセスに作用して、増殖出来なくしたり、殺したりするわけです。

とは言っても、これじゃ具体性があまりになさすぎますよね^^;

そういうわけで、抗生物質と言えばまず名前が出てくる 『ペニシリン』 の作用で、その辺りを見てみましょう。
ペニシリンの作用と、効く効かない
右の図は、細菌(真性細菌)と思ってください。
細菌は動物の細胞と違って、『細胞壁』 を持っています。

中学の理科あたりで出てきたと思いますが、動物細胞は『細胞膜』しか持っていません。
この 『細胞壁』 ですが、細菌が増殖する時は、以下のようなプロセスを辿ると思ってください。
(わかりやすくするために、細胞壁をかなり分厚く書いています)
分裂したての細菌は、1つの個体の 『材料』 を2つに分けていますから、細胞壁はその分薄くなっています。 これを、元の厚さに回復させます。
言い換えれば、分裂前(A)と、分裂直後(B) の細胞壁の総量は同じなわけです。
Aの時の細胞壁の体積を1とすると、Bの時は、細菌1つあたりの細胞壁の体積は1/2になっているわけです。
そこで、細胞壁の元となる物質を生産して、細胞壁を厚くするのですが…ペニシリンは、この「細胞壁の元となる物質を生産する」プロセスを阻害します
そうなった場合、どうなるかと言うと…
細菌1つあたりで見れば、分裂を繰り返す度に、細胞壁が薄くなって行っちゃいますよね。
もう、結果が予想できているのではないかと思いますが、その事について少し詳しく書きます。
細菌の内部は、周囲に比べて 『濃い』 状態です。
そのままでは浸透圧によってどんどん水が入ってきますが、これを細胞壁で防いでいます。
しかし、分裂のたびに細胞壁が薄くなっていくので、入っていく水の量が増えていって…。

(A) 細胞壁が薄くなって行く ⇒ かたちを保つ力が弱くなっていく
(B) 流入する水の量が増える ⇒ 膨れようとする力が大きくなって行く
上記(A)(B)の事が同時に進行していきます。当然、最後にはかたちを保てなくなって、破裂します。

ペニシリンは、こういう作用で殺菌/菌の増殖を抑えているわけです。
さて、細菌についてはペニシリンはこんな作用をしますが、動物細胞についてはどうでしょう?
動物細胞には細胞壁がありませんから、ペニシリンの影響は細菌よりもずっと小さい = 毒性が格段に低いわけです。

つまりペニシリンは、細菌にのみ作用して、選択的に殺菌/菌の増殖を抑えるお薬なのです(※)。
※細菌全てに効果があるわけではなく、『グラム陽性菌』 と呼ばれるカテゴリに効果が高いです。
詳しくは、『グラム陰性菌』等について調べてみて下さい。
こう書くと、いいことずくめのようですが…。
ウィルスも細胞壁を持っていないので、こいつらにはてんで効きゃしません。
(そもそも、『細胞』じゃないですし)
一番身近なウィルス性の病気と言えば風邪ですが、風邪の時に抗生物質を飲んでも、全く持って効きゃしないってのが実際です。

市販されてる総合感冒薬には抗生物質は入ってないので、意識する必要はないですけどねw
※風邪をひいた時にお医者さんが抗生物質も処方するのは、「抵抗力の低下により、細菌による他の感染症(肺炎など)を防止するため」 なんだそうです。
おわりに
前のセクションの最後に書いた事のせいで、抗生物質は効果がいまいちな印象を持たれた方がいらっしゃるかもしれませんが…それもちょっと違っています。
傷なんかが原因で起こる感染症は基本的に細菌性ですから、抗生物質は最適なわけです。
(傷薬や虫刺されのお薬には、抗生物質入りのものもありますしね)

何度も書いている事ですが、
いくらお薬を使っても、使う物が間違っていたら、てんで効果がない
わけです。

この事は、気に留めておいて損はないと思いますよ♪
(もちろん、ひどくなったら、ちゃんとお医者さんに診て貰いましょうね^^;)
このエントリーをはてなブックマークに追加
※このページはリンクフリーですが、リンクの際はご一報下さると、管理人が喜びます。