虫に刺された場合の応急処置

CONTENTS
野外における虫さされ -数え上げればきりがないが…-
持っておきたいもの -これだけあれば、ほとんど対応可能!-
覚えておきたい対処方法 -覚えるべきは意外と少ない-
ステロイド系軟膏は完全無欠? -薬には、副作用があります-
急いで口で吸え!とは言うけれど・・・。

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野外における虫さされ −数え上げればきりがないが…−

 ムカデに咬まれた場合の対処の仕方をご存じでしょうか?
「抗ヒスタミン系成分を含むステロイド系軟膏を患部に塗り、腫れがひどいようなら患部を濡らした布で湿布する。 症状がひどいようなら、抗ヒスタミン剤を服用する」といった対処方法がすぐに出てきた方は、殆どいないのではないかと思います。
 実際、わたしたちが普通に知っているのは、「何に刺されると痛い」だとか、「何に刺されると一回目は大丈夫だが、抗体が出来てしまうため2回目に刺されると死ぬ」といった知識が殆どだと思います。対処方法は意外と知っていません。
 このコーナでは、虫に刺された時の応急処置を簡単に説明させて頂きます。

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持っておきたいもの −これだけあれば、ほとんど対応可能!−

 薬品は、以下の中から一つ(出来れば全部欲しいところですが、結構高くつきます)
・抗ヒスタミン系成分を含むステロイド系軟膏
・抗生物質を含むステロイド系軟膏
・非ステロイド系の虫刺され用軟膏
 また、患部を清潔に保つため、以下のものも用意しておきたいところです。
・刺されたところを洗い流すための水
・清潔なハンカチ・包帯
・毒毛や針を除去するためのテープ類(テーピング用のテープでも代用可能)
以上のものを用意しておけば、たいていのケースには事足ります。
とはいえ、これだけではあまりにも不親切なので、少しばかり説明をしておきましょう。

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覚えておきたい対処方法 −覚えるべきは、意外と少ない−

実は、覚えておくべき事はそんなに多くありません。
以下に、よく起こりそうな虫さされと、その対処方法を挙げてみましょう。

ハチに刺された
対処方法注意事項
抗ヒスタミン系ステロイド系軟膏を患部に塗る(針が刺さっているようなら、先に抜いておく)

腫れがひどいようであれば、濡らした布で湿布する。

症状がひどいようであれば、抗ヒスタミン剤を内服する。
何度も刺されると、アレルギー反応(アナフィラキシーショック)を起こす場合があり、最悪の場合死ぬこともある。
この場合、吐き気、血圧降下、呼吸困難、意識消失などの全身症状が起こるので、これらの症状が出た場合、急いで医療機関に連れて行くこと!

アンモニアが効くというのは迷信!患部がただれる等のひどい目に遭う可能性があるため、やっちゃダメ!

尿を患部にかけるといいというが、ハチの毒の殆どは非常に水に溶けやすいため、それなりに効果がある。

クモにかまれた
毒性がハチと殆ど同じなので、ハチと同じ対処方法でいい。

毛虫に刺された
対処方法注意事項
@ まず、セロテープなどを用いて毒毛を除去する
A 抗生物質を含んだステロイド系軟膏を患部に塗る。
処置しないうちに患部をこすっては、絶対にダメ!

ムカデにかまれた
対処方法注意事項
毒の主成分はハチと同じ。ハチと同じ処置でいい。 牙が患部に刺さったままであれば、先に除去しておく。

毒アリにかまれた
これもハチと同じ応急処置をすればいい。

ハネカクシの毒が皮膚に着いた
対処方法注意事項
細菌感染を防ぐため、抗生物質を含んだステロイド系軟膏を患部に塗る。 処置しておかないと、嫌な痛みがかなり長く続く。

蚊に刺されたケースについては、誰でも知っているため割愛します。
いかがでしょうか? 覚えておかなければいけない事は意外と少なくて済む事が判ったと思います。
要は、ステロイド系の軟膏さえ持っておけば、たいていのケースには対処可能なのです。
このステロイド系軟膏、薬屋さんに行っても自分で探すのは結構難しいと思うので、薬剤師さんに探してもらった方がいいと思います。

また、症状がひどい場合に備えたければ、ステロイド系内服薬や抗ヒスタミン剤も用意していくといいでしょう。

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ステロイド系軟膏は完全無欠? −薬には、副作用があります−

ステロイド系軟膏は、虫さされに対しオールマイティーな効果を発揮します。
抗ヒスタミン成分を含むステロイド系軟膏と、抗生物質を含むステロイド系軟膏を持っていれば、虫さされ対策はほぼ万全と言えるでしょう。

一見いいことずくめのこの薬ですが、欠点がない訳ではありません。
ステロイド系成分は、強い光に反応して肌に色素定着(シミ・黒ずみ)を起こすそうで、日差しの強いところで塗ると、シミなどが出来てしまうそうです(薬剤師さんから聞きました)。 これは、別の意味でたちが悪いです。

でも、その欠点もカバーできないことはありません。
要するに、光に当てなければよいので、処置した箇所を包帯などで覆って、光が当たらないようにしてしまえばいいんです。 また、最近は非ステロイド系のハチ刺され用軟膏などもあるので、絶対に色素定着を起こしたくない方は、こちらを使用すると良いでしょう。 ただし、効果はステロイド系の方が断然上だそうです。

□H14/11/6 追記
某NHKの番組を見ていたら、大量のステロイドは、リンパ球の働きを阻害すると言っていました。ぶっちゃけて言えば、熱が出るようなひどい風邪をひいているときにステロイド系軟膏をたくさん塗ったりしたら、風邪の治りが遅くなったりする可能性があるということです (いろんな意味で、そんなケースはないと思いますが…)
そんな重篤なケースを考える意味がないかもしれませんが、副作用に類するものなので、一応追記しておくことにしました。
それ以前に、風邪引いた状態でフィールドに出るようなマネは、出来ればしないでください^^;

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急いで口で吸え!とは言うけれど・・・。

ハチに刺された時など、毒を口で吸い出せとよく言います。けれど実はコレ、あまりやらない方がいいそうです。
理由は、ヘタに口で吸い出すと、いくら口を濯いでも毒が口の中に残ってしまう事があるからです。
それに、口の中が丈夫な人ならともかく、歯槽膿漏を持ってる人や、喫煙者は、口の中の弱くなっている所から毒が染みこんでくる可能性すらあります

以上の理由から、毒を出すときは、口で吸い出すことはせずに、手で絞り出すとか、毒抜き器を使った方が良いでしょう。


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終わりに

以上、虫さされの対策を書かせて頂きましたが、そもそも、虫に刺されないようにするのが一番の対処方法です。
虫に刺されないようにするための方法は、また別の機会にでも記す事にしましょう。

参考文献

  • 野外における危険な生物 (思索社)
  • アウトドア 危険・有害生物完全マニュアル (学研)

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