ヘビに咬まれた、どうすりゃいいの?

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まずは、毒蛇に咬まれたかどうか調べる! 
咬まれたらするべき事
これは絶対、やっちゃダメ!
各ヘビの毒性
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まずは、毒蛇に咬まれたかどうかを調べる!

ヘビに咬まれたとき、一番最初にしなければいけない事は、咬んだヘビが毒蛇かそうでないか見分けることです。 そうしないと、手の打ちようがありません。
マムシやヤマカガシは見た目からして他のヘビと違うので、それだけで判断できますが、全くヘビについての知識がない場合はとても困る事になります。
というわけで、まずは毒蛇に咬まれたかどうかの判断基準を記す事にします。

咬まれた時のケースから判断する

よくあるのが、山歩きの時などにヘビらしきものに咬まれて、びっくりしているうちにヘビが逃げてしまったと言うケースです。
このケースでは、ヤマカガシに咬まれたとはまず考えられません。 それに、思い切りかみつかれたというのならともかく、ちょっと咬んで逃げたくらいでは、ヤマカガシの毒が入る可能性はありません。

咬み痕から判断する
咬み痕 右の図を見て下さい。 ヘビの咬み痕で、赤い点の部分が毒牙の部分です。

無毒ヘビと、マムシ・ハブの咬み痕は全く違う事が判るでしょうか? これだけでも、マムシ,ハブに咬まれたかどうかの判断基準になります。
ヤマカガシは判断するのがちょっとやっかいですが、見た目に結構派手なヘビなので、そうそう他のヘビと間違う事もないと思います。

痛み・腫れから判断する

殆どの場合、毒が入ったら、激しい痛みを感じ、その痛みはずっと後まで続きます。 非常に激しい痛みの場合もあります。
無毒ヘビの場合は、ちくっと刺された程度の痛みがあるだけで、強くなく、すぐに痛みはなくなります(思いっきりかみつかれた場合は、当然のごとく機械的に痛いですが)。

また、マムシやハブの仲間の場合、咬まれた局部は必ず腫れます。腫れはすぐに始まることもあれば、数分経って始まる場合もありますが、必ず著しく腫れます。 このため、30分経って腫れも痛みもなければ、毒蛇に咬まれたのではないか、毒が注入されなかったかのどちらかと考えてかまいません(ただし、ヤマカガシの場合は一概にそうとは言えないのですが・・・これはヤマカガシの毒性の項で後述します)。

□補足(H14/11/6)
ここでは、『毒が注入されたかどうか』について述べていますが、毒蛇に噛まれたからと言って、必ず毒を注入されるとは限らない事を覚えておいてください。
ヘビの立場からすれば、噛んだときに全ての毒を注入してしまうと、毒がたまるまでの間は無防備になってしまうわけですから、場合によっては噛んだだけとか、ちょっとしか毒を注入しなかったって事もあるわけです。
このため、マムシ・ハブに噛まれた場合、しばらく経って腫れなければ心配ないでしょう。
※マムシ・ハブの仲間に限った話です!)

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咬まれたら、するべき事

咬まれたのが無毒ヘビの場合、消毒して抗生物質入りのステロイド系軟膏でも塗っておけば問題ありません。 刺し傷と同じ対処でいいでしょう。

毒ヘビに咬まれた場合ですが…日本の毒ヘビの場合、素人に出来る手当は全くありません。 「何もしなくても間違いではない」 と言われるくらいです。
とは言っても、しなければならない事もありますので、それらを以下にまとめてみました。
  • 患者を休ませる
  • 患者を安心させる(数時間経っても、血清は有効に使える)
  • 咬まれた局部を動かさないようにする。
  • 出来るだけ早く医療施設に連れて行く。
こうしてみると、常識的な対応で十分なことが判ると思います。

ここで、「毒を吸い出さないの?」「冷やさないの?」といった疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか?
確かに、これらの対処方法はよく言われるのですが、実は・・・。

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これは絶対、やっちゃダメ!

日本の毒蛇に対しては、素人が出来ることはほとんどない事は書きました。
しかし、やってはいけない事は結構あるので、今度はそれに着いて書きましょう。

慌てるな!

マムシやハブの毒は、意外にまわりが遅いです。 数時間経ってもまず死ぬことはないので、安心して下さい。
それに、焦ると脈拍が早くなって、毒のまわりを早くしてしまいます。
まずは、落ち着くことが大事です。
(いやまぁ、言うのは簡単ですが…(汗;)

やたらにしばるな!

特に日本のヘビの場合、圧迫帯のよい効果は殆ど立証されていません
逆に、毒に犯されている部分への血流を止めると、毒作用に加えて酸素欠乏症で組織が死に、後に後遺症が出たり、最悪の場合は手足を切断するハメになったりします。まさに、百害あって一利なし、です。
患者の不安を和らげるという点では効果があるかもしれませんが、それ以外には大した効果はないというのが実際の所です。
やるのなら、少し血管が浮き出る程度に縛り、10分に1回くらいはゆるめてください!

やたらに切るな!

咬まれた時点で、毒は一気に組織の中で分散してしまっています。 直ちに切って吸い出しても、出るのは血だけで、吸い出せる量は微々たるものです。
むしろ、なんでもない傷を大変な事にしてしまう可能性があるので、ヘタに切ったりしないでください!

酒を飲むな!

 患者を安心させるためと言っても、酒を飲むと血液の循環が速くなるので、全くの逆効果になります。

氷、その他の方法で冷やすな!

組織の破壊を促進するだけなので、絶対にやっちゃダメ!


また、「急いで毒を吸い出せ」 といいますが、これもあんまり意味がありません。
むしろ、誤って毒を飲み込んでしまったり、口の中に残ってしまったりする危険があります。 もしそうする場合は、ちゃんと毒抜き器を使いましょう。ないのなら、ヘタにやらない方が身のためです。

補足(H14/11/6)
「やたらと吸ったり縛ったりするな!」と上記していますが、殆どの救急関連HPには、むしろそうしろと書いてあります。
これを書く上で参考にした文献には、それは御法度だときっちり書いてあるのですが…おそらく、そういうステレオタイプな対応をすることで、患者を安心させるという事を重要視しているのではないかと思います。
(「慌てるな!」ですからね)

また、この記事を書いたときには考えから抜け落ちていたのですが、子供の場合、そもそも体が小さいため、毒の回りが早いので急ぐ必要があります。患者が子供の場合は、吸い出したり縛ったりという処置も必要になるでしょう(たとえ効果が小さいとしても、ね…)。

補足(2011/11/16)
上記補足についての、さらに補足なのですが…この件に関して、医療関係者の方(医師免許を持つ、ちゃんとしたお医者さんです)に話を伺う事が出来ました。
Q.マムシ等の毒蛇に咬まれた時は、心臓に近い位置を縛ったほうが良いのか?
A.あまり効果はないが、気休め程度にはなる。
余程強く縛ったりしない限りは、縛っても2時間位は大丈夫なので、患者を安心させるためには縛った方がいいかもしれない。

Q.必ず血清を打たなければいけないと言う人も多いが…。
A.率直に言えば、血清を打たなくても死亡する事はまずない。ただし、稀に死亡する場合がある。
副作用の強さを考えると、血清は打たない方が良いのだが…万が一死亡してしまった場合、血清を打っていなければ裁判で必ず負けてしまう。だから、「必要な処置」として血清を打つ。
なんだそうです。

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各ヘビの毒性

 さて、ここからは、各毒蛇の毒性について少し書いておくことにしましょう。

マムシ・ハブの毒性

マムシ・ハブはともにクサリヘビ科に属するヘビで、毒性も似ています。
この毒は主に咬まれた局部を犯し、咬まれた場所の腫れと痛みが主な症状です。 腫れは5〜10分以内に始まって、だんだん広がっていきます。
毒性としては、局部の組織と細かい血管の壁を溶かすため、循環系統からリンパ液と血液が出て皮下に漏れて腫れを引き起します。また、あちこちの皮下出血、吐き気、唇のしびれ等の全身的な症状が現れることもあります。
基本的に、手足を咬まれた場合は、致命的ではないと考えてかまいません(それでも、医療施設で手当を受ける必要はありますが)。
顔や首を咬まれた場合は、腫れによる窒息の危険があるので、急ぐ必要があります。

ヤマカガシの毒性

遅効性の毒なので、すぐには症状が出ませんが、20分〜数時間後に、全身の血液が凝固能力を失ってしまいます
そのため、血尿、血便、全身的な皮下出血、古傷からの出血、腎臓の機能障害などが現れます。
すぐには症状が出ないため、見落とすとやっかいですが、時間的猶予があるとも言えます。 早めに病院に行って治療してもらいましょう。

ウミヘビの毒性

症状が出るのは咬まれた人のうち3割ほどで、2時間経っても症状が出なければ心配ありません
神経よりも筋肉を侵します。 まず腕、足、胴、舌などの筋肉が痛くなり、口も開かなくなります。数時間後には筋肉の破壊による物質が排泄され、尿が赤褐色になります。
咬まれたら、とにかくすぐ病院で治療してもらうしかありません。

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■終わりに

以上、ヘビに咬まれた場合の対処方法を書かせていただきましたが、率直に言えば、 「あわてずさわがず、さっさと病院に行け!」 となります。
そのため、 「ヘビに咬まれた場合にどうすればいい」 というよりは、「ヘビに咬まれてもこれだけはやるな」 といった意味合いの強い記事になってしまいました。
とはいえ、「やってはいけない」 系の知識も、対処方法として必要なことですよ。

■参考文献

  • 野外における危険な生物 (思索社)
  • アウトドア 危険・有害生物完全マニュアル (学研)

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