日暮れの山道こわい道…
ここはホントに道なのか!?

<景信山山頂〜小仏沢バス停>

「なんだかすごい道・・・。」
景信山を出てからの道は、こんな印象に尽きる。
最初の方は階段などがあってまだましだったのだけど、それが終わった途端に急にむちゃくちゃな道になる始末。 道なことは道なのだけど、ひどいってもんじゃない。ひどいというのはすごい藪とかいう事ではなくて、ともかくすごいとしか言いようがない。景信山までの道がさらにひどくなっているという感じだ。 粘土質の地面が露出しているだけでなく、ここはホントに雨が降ったときの水の通り道になっているらしい。そのせいで道が二つとか三つに分かれていて、どれが元々の道なんだか判らない。救いといえば、マクロ的に見れば一本の道ということと、見通しがいいから迷わない、ということぐらいだろうか。
このあたりは植林のようで、ちゃんと管理されているみたいだけど…道の方をちゃんと管理して! このぶんじゃ数年後にはとんでもない有様になるぞ!(今でも十分とんでもないけど)。

きつい下り勾配のせいで、歩いていくうちにスピードはどんどんついていく。でも、地面が粘土質のせいでふんばって止まることは出来ない。 結果として、木に掴まってスピードを落とすことになる。
高尾山からここまでって、なんて千変万化な行程だ。

そのうち、勾配がいくらかましになってきて、ちょっとの区間だけ完全な水平になる。 立て札が立っていて、先は今度は登り。脇に下りの道があって、「**沢を経て、小仏バス停」と書いてある(**はなんだったか覚えていない)。
「そろそろホントに雰囲気やばくなって来たし、潮時かな?」
その頃には、かろうじて物が見える程度の暗さにまでなっていた。 陣馬山までは距離が相当あることを考えると、ここら辺りが限界だろう。 景信山〜陣馬山では、ここが最後の逃げ道らしいことを考えても。

じゃあ撤収〜! と簡単には行かなかった。 バス停までの道は、別の意味でとんでもない道だったからだ。
「なんか、今までと雰囲気ちがうな」
道は、明らかに様相を変えていた。 今までは、道は荒れていても見通しはよかった。 でも、今度の道はひたすら見通しが悪い。 道の両脇は丈の高いカヤがぼうぼうに生えていて、時たま道幅を極端に狭くしている所すらある。
「ここ、ホントに道なのか?」
だんだん不安になってきた。クモの巣が頭に引っかからないから、そこそこ人が通る道ではあるようだけど…。

さすがに信用できなくなって、地面を見ながら歩き始める。踏み固められた感じは人が通る道であることを示しているし、草むらが両側にせり出してきていると言っても、道幅はかろうじて一人通れる幅を保っている。ここに原人でもいない限り、これは人の通る道だろう。
とは言っても、ひとつだけ嫌な可能性が残っていた。
(ここ、まさか熊出ないだろうな?)
んなわけないか、とは思っていたが、後に聞いた話によると出ることもあるらしい。
ただ、その時はそんなことは知らなかったし、ガイドに「細い道」と書いてあったから、気にせず進んでいった。 人の足跡を見つけたせいで、ここは道だと確信したせいもある。
とはいえ、やっぱり日暮れの山道は寂しいもの。潜在的な不安が常に意識の片隅にある。
そのせいで小走りに道を進んでいったのだが、道から逸れたところに ピンク色の花を見つけて立ち止まった。 右手の下り斜面をちょっと降りたところに、たくさん咲いている。
「なんだろう?見たことない花だけど?」
興味を惹かれたので斜面を下り、写真を撮っていくことにした(そんなことしてる場合じゃないでしょうが(^_^;)。 そばにはカンアオイが生えている。下手をすると今日は野宿かな、などと考えていたせいで、わたしの頭をよぎったのは
(カンアオイって、ウマノスズクサ科だから食べられないかな?)
である。なんか情けない(※この時は植物による中毒症状に関してあまり知らなかったのでこんな事を考えましたが…少量なら薬になると思いますが、多量に摂取すると中毒症状を起こすと思います(汗;)

相変わらず道脇の森は杉の植林。ちゃんと枝が落としてあるから、管理されているのは判る。 もしかして、この道ってそのための道なのか?
だんだん、そんな気がしてきた。何しろ、人の足跡が少なすぎる。おまけにこの道、時たまちょっとした崖を越えなきゃいけなかったり、道幅が極端に狭くなったりと、不安材料を常に提供してくれる。 分かれ道からここまで来るのに要した時間は30分。里までは1時間の行程だと書いてあったけど、ホントにこれでいいのか!?
少しずつ迫ってくる闇に緊張を強いられながらも、とりあえずは下ることしか出来ない。 道そのものはいいのであまり気にはならないが、結構ここの下り、急だ。 だいぶ疲れてきているから、とてじゃないけど引き返す気にはならない。引き返したところで、このぶんだと道を見失うおそれがあるから、このあたりで野宿した方がまだましだろう。少なくとも道である限り、どこかに通じている筈だし。

…通じていた。いきなり沢に出て、そこに立て札が立っている。沢を横切って行く道は陣馬山の方面で、沢に沿って行く道が里への道らしい。里へ下りる方の道は、今までの道よりも道幅が広く、しっかりしている。
ふう、なんとか無事に降りられそうだ。
しかし、またまた困った事が起こった。 里への道は、すぐに沢に合流してしまったのだ。 道はどう見ても、沢の中へと消えている。沢の中を進んで行けということなんだろうか? そうじゃなければ行き止まりだ。
「・・・まじかい」
まさか沢に入って進むことはないだろう。 しょうがないので立て札の所に戻ってみる。 やっぱり道は二本しかない。 いっそのこと陣馬山方面に行こうかとも考えたけど、間違いなく迷いそうだったので、やめた。 となると、ここで野宿か?
(それも、やだなぁ)
なにしろ日帰りする予定だったので、全く装備がない。
いつの間にか、わたしはまた行き止まりの所に来ていた。目の前には、道のかわりに沢がある。
(それにしてもこの沢、なんとか通れそうだな。試しにちょっと進んでみるか)
通るのが無理そうになったら引き返せばいい。 その時は本当に野宿だけど、そっちの方がましだ。 闇の中で沢下りをするほど、危険なことはない。
さっさと行動を決め、沢の中を歩いていく。この沢のこの場所、かなり浅い。沢と言うよりは、地面の上を薄く水が流れていると言った方が正しいだろう。
ざくざくざく・・・。
「あ・・・。」
道につながっていた。「沢を経て」ってこういう意味だったのか…初めて来る人間にはわかんないぞ! 沢に入って行く場所に立て札たてといてよ!

それからの行程はすぐだった。10分ぐらい進んでいくとキャンプ場へ出て、そこでキャンプをしていた人にバス停への道を訊く。
少なくとも道沿いに歩いて行けば大丈夫な所まで来たので、一息つくことが出来た。ただ、バス停への道がこれまた遠く、暗い夜道を30分も一人で歩く。 道脇にキバナアキギリやツリフネソウが咲き乱れているのが微かに見えるが、もう写真を撮る気にもならない。 よしんば撮ったところで、この暗さじゃろくな出来にならないだろうし。
バス停に着いたときには、もう時刻は18:30をこえていたと思う。辺りは真っ暗。街頭の明かりの下、たまたまバスを待っていた40ぐらいのおじさんと立ち話をし、バスに乗ってJR高尾駅まで帰る。相当疲れていたのか、八王子で乗り換えた横浜線の中では、古淵駅を通り過ぎて寝ていた(3駅乗り越しました(^_^;)。
ま、なんだかんだあったけど、無事に帰ってこれてよかった、ってことにしときましょう!

教訓

まだ一回も行ったことがない上、時間かかるってわかってるんだから、もっと早く家を出ましょう。

余談

今回はまだ、被害らしい被害を被らずに済んだのだけど、10/11に行った大地峠ではとてつもないボケをやらかした。
それはまた、別の話で。
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