まだまだ行けるぞ16:30!
思えばこれが間違いの元

<小城山山頂〜景信山山頂>

小城山の山頂に着いた時間は、15:30 少し過ぎぐらいだった。写真を撮りながら来たせいで、予定よりかなり遅れている。 不安定な天気はさらに機嫌を悪くしてきて、空はどんより曇っている。でも、下山するにはまだ早い。
(ちょっと時間的にしんどいかな…やっぱ、せっかくだから行けるところまで行こう)
そう決めてさっさと出発の準備を整え、立ち上がる。 さっきまで聞こえていた人の声は、いつの間にか止んでいた。

空はどんより曇っていたものの、このあたりはまだ明るかった。道脇にヤマハッカが生えていたり、 ノダケ が生えていたりと、山の中にある野原といった雰囲気だ。しかし、それもすぐに終わった。城山山頂からの道を下り終わると、すぐに林道に入る。今までとは雰囲気が全然違う。道の幅は狭くなり、二人並んで歩くのが精一杯だろう。 空が曇っていることも手伝って、辺りはなんか出てきそうな感じの薄暗さ。すれ違う人もいない。もっとも、こんな所で人に会うのも、なんだかこわくて嫌だけど。
左右の森は明らかに植林で、杉の木が規則正しく立ち並んでいる。 道脇は草ぼうぼうで、目につくものといえば、 オオチゴユリの黒い実 ぐらい。とことん雰囲気が寂しい。

そんな感じの道を20分ぐらい歩いただろうか?不意に勾配が急な下りになり、ブロックで作った階段になる。 階段と言っても即席で作った様子で、斜面のままよりはましな程度だ。 コケたらたまらないと思い、カメラをかばいながら下る。 下の方はちょっとした広場になっているようだ。キャンプ場かなんかかな?

下り終えると、どうやら休憩所のようだった。城山の山頂で見たのと同じ、文字通り潰れかけたような店が何件か建っていた。
(なんでこんなのほったらかしにしとくかなぁ…。)
使ってないなら撤去しろよ!と思いつつ店の間を歩いていくと、不意に声をかけられた。
「にいちゃん、どこまで行くん?」
人がいたのか!?
声の主を探すと、店の中からだった。70ぐらいのおばあさん。どうやらこの店、今でも使われているらしい。
「ええと、行けるところまで行こうと思ってますけど…。」
「懐中電気とか、もってる?」
そりゃまぁ、そうだよなぁ。普通この時間にこんな中途半端な所通ってたら、山中で一泊するか夜間の山越えと考えるだろう。
「いえ、暗くなってきたら降りようと思うので…。」
「そやったら、景信山あたりでやめとき。ここはまだ峠のまんなかやからな」
「はい。そうします」
景信山か。次のチェックポイント(?)だよなぁ。確かにそのぐらいが妥当な線かな?

おばあさんに礼を言って立ち去ると、すぐに広場の出口にさしかかる。ここで道が二股に分かれていて、片方は急な登り、片方は緩やかな下り。今までのパターンから言って両方同じ道に合流すると思ったので、疲れていることも手伝って下りの方を選ぶ。…トイレだった。
時間と体力のロスをしたがしょうがない。戻って登りの道の方に進んだ。ちょっと登ると道脇に道祖神が祀ってあり、花瓶に花も生けてある。なんだかおかしくなり、お賽銭をあげていくことにした。ちょうど財布の中の一円玉が多かったので、全部出して賽銭箱に入れる。
ぱん、ぱん。無事に帰れますように。
後から思えば、なんでこんな願い事をしたのかよく判らない。多分、なんとなくだろう。そろそろホントに薄暗くなってきてたし。

その先の道は、本当に峠だった。勾配はずっと登りのままで、道も細い。 さっきまでの林道と違って、人が通るように整備されたという感じではなく、時折道なんだか雨が降ったときの水の通り道なんだかわからないといった所すら出てくる。
ぜえぜえはあはあ言いながら進んでいくと、不意にエンジン音のような音が聞こえて来だした。 最初は地下水のポンプでもあるのかと思ったが、音はだんだん近づいてきている。ポンプが動くわけないし…。
何かと思ったら、前から耕耘機が近づいてきた。耕耘機と言っても、コンバインではない。手で押すようなかたちのやつ。 おじいさんがそれを押して(?)いて、上には荷物が積んである。あ、なるほど。勾配が急だから、エンジンブレーキ利用してるんだ! 登りの時には、耕耘機の推進力を利用出来るし。
こんな使い方もあるんだなぁ、と思いつつ、脇を通り過ぎて先を急ぐ。途中、道を補修している人がいた。この辺りは、雨が降ったらすぐ道脇が崩れるのだろう。
両脇の森は植林と自然林が混じり合っているような感じだ。 空がちょっと晴れたのか、辺りはさっきよりも明るくなっている。 ただし、光が朱色…こりゃ、ホントにさっさと降りた方がいいかも。
時たま「あんまり人通ってないんだろうなぁ」と思わせるひどい道になっているところもあったものの、ペースはおおむね好調。この暗さでは写真は撮れないと思い、カメラをディバックに戻す。時間的にもあんまり余裕ナシ。

そこそこ急いだこともあって、16:15ぐらいには景信山までたどり着いた。もう夕暮れ時も終わりにさしかかっており、辺りを満たす光はか細い。 むしろ、薄闇の部分が多いくらいだ。
景信山山頂には5人ぐらいのパーティーが休憩をとっていたが、みんな懐中電灯を持っている。 ここら辺りでキャンプを張るつもりなのだろう。食料も用意してきているみたいだし。
・・・食料か。おなか減ったなぁ。
水を少しとり、タバコをふかしながらどうするか考える。このままここから降りるか、もうちょっと先の逃げ道から降りるか…。
時計を見ると16:30ジャスト。このまま降りるには、少しもったいない時間かな?
(すぐに逃げ道があるみたいだし、まだまだ行ける、かな?)
結局、先へ進むことにする。
ここでやめときゃ、すんなり降りれたのにね…。
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