風はさわやか天気は不安!

<高尾山山頂〜小仏城山>

高尾山の山頂はこの辺で有名な観光地らしく、多くの人で賑わっていた。ケーブルカーもあるし、ちょっと出てくるにはちょうどいいのだろう。ちらほらと登山装備の人が混じっているのが、なんかおかしい。
ここで15分ぐらい休憩を取ることにしたのだけど、いきなりちょっとした問題が発生する。 ペットボトルが早くも空になってしまった。 うーん、いつもジュース飲みながら仕事してるから、水中毒になってるのかな、わたし? ここで買ったら、下の三倍ぐらいの値段しそうだし…。
どうすべきか迷っていると、すぐそばに水道の蛇口があるじゃないか。早速水をくもうとしたが、ちょっと不安になる。
(ここの水、飲めるのかな?)
山にはよくあることだけど、「ここの水は飲めません!」 だとすると具合が悪い。あとでおなかをこわしでもしたら、それこそしゃれにならない事になる。 かといって、お店で買うのも気が引けるし…。
「あのー、ここの水って、飲めます?」
判断がつけられないので、そこで手を洗っていたおじさんに尋ねてみる。
「飲めると思うよ・・・うーん」
おじさんも自信なさげだ。 そこらにお店もたくさんあることだし、大丈夫だろう! きっと大丈夫! 大丈夫に違いない! 大丈夫だといいなぁ…。
そんな感じでわたしが水をくんでいると、そのおじさんの奥さんらしき人が 「本当に大丈夫ぅ?しらんよぉ」。
一瞬、わたしの動きがぴたっと止まる。そばで一緒に水をくんでいたおじさんも、ちょっとばかし硬直した。
「だ、大丈夫ですよ、あは、ははは」
知らないところだけに、自信はない。
水をくみ終えると、わたしはおじさん夫妻に城山への道を訊き、教えられた方向へ向かった。

高尾山山頂から小城山への道は、林道を歩き慣れた人にはつまらないかもしれない。
まず、のっけからコンクリートの階段。 木の枝が天井を作っていて薄暗い中、これがずぅっと下っている。 階段の脇にはロープが張ってあって、「植生を回復中です。入らないでください」というカンバンがかけてある。 まあ、これだけ人が多いと、入るのを許しただけでも踏み荒らされてむちゃくちゃになっちゃうか。
そこをしばらく歩くと、今度は普通の林道になる。左手側に時たま林の切れ目があり、どこだろう、遠くの山並みが。写真撮ってこうっと!かしゃ!
(余談:初めてPLフィルタを使ってみたが、失敗してとても人には見せられない出来になる)
植物に関して言えばここはあまり見るものはなく、階段の途中にモミジハグマがたくさん咲いていたのと、林道の中ではシオヤマギク(?)がぽつぽつ咲いていたぐらいだった。

歩くこと15分ぐらい、空が明るくなってくる。道が広くなり、木の枝の天蓋がなくなる。 歩きやすいことは歩きやすいのだけど、林道の方がいいかなぁ…。
ちょっと曇りがちな空の下、道行く人たちとすれ違いつつ歩みを進める。 最近のアウトドアブームのせいか、はたまたそういう趣味の人が多いのか、人の数は多い(とはいっても、2,3分に一回すれ違うぐらいだけど)。 しかも、みんなちゃんとした装備で来てる。 デニムのシャツにジーパンなんて格好なのはわたしぐらいのものだ。 多分、素人さんだと思われてることだろう…実際その通りだけど。

さっきも書いたけど、ここは「山を歩く」気分で歩くと少しつまらないかもしれない。けど、わたしとしては結構面白かった。 途中何カ所か休憩所があるせいか、気分的には昔の「街道の旅」だ。 そういうわけで、「姫神」の「奥の細道」を口ずさみながら歩いていく。 時たま、「シルエットミラージュ」の「泣けるうちは元気」だとか、「プリルラ」の「ザックとメルの街」が混じったりもした(判る人いないだろうなぁ、これ)。
風が気持ちいい。でも天気は不安…。

行楽気分で歩いていくと、下りの階段になっているところの、ちょっと離れたところにシオヤマギク(相変わらず"?"。キク科は自信ないから)がいい具合に群生している所があった。「いい絵になりそう!」と思って、階段をそれて近づいていったのだけど…。
ずり!

「ん!?」
気付いたときにはもう遅い。 足下を見なかったのが失敗だった。 そこは粘土質の地肌が露出していて、昨夜雨が降ったせいもあってつるつるになっていた。
当然キャラバンシューズなんかじゃ踏ん張りが効くはずもなく…。
「わわわわ!」
おもいきしずっこけたあげく、立ち上がれないで3mぐらいすべり落ちる。 草をひっつかんでやっとの事で立った時には…道行く人の目が白かった。 当然のごとく、逃げるようにして立ち去る。
そのせいでしばらく早足で進んでいたのだけど、道脇に紫色の花を見つけてふと立ち止まった。見覚えのある、釣り鐘型の小さい花。
「これ、ツリガネニンジン?」

ちょっとびっくりした。というのも、鳥取では、ツリガネニンジンは海岸の崖なんかにたくさん生えている。 そのせいで山地の植物というイメージがあまりなかったのだけど、やっぱり、山地に生えてるのが普通なんだろうなぁ。
せっかくだからと思い、写真を撮っていると、逆の方からきたおばさんが話しかけてきた。
「なにかいいものありました?」
「これ、ツリガネニンジンですか?」
あまり自信がなかったので訊き返したら、おばさん、鳩が豆鉄砲食らったような顔になっていた。
「有名なのしか知らないから・・・。」
どうも、ツリガネニンジンはメジャーではないらしい。
「ところで、ワレモコウってご存じ?」
「?ワレモコ、ですか?」
まーったく知らない。メジャーなものなのかな?
訊いてみると、ベージュ色の花(穂?)の植物で、わたしが今から行く方向にちょっとあったらしい。しかし、どんなものなのかわたしには全然想像がつかなかった (あとで調べて判ったけど、ぱっと見はねこじゃらしみたいな感じ)。
「じゃあ、わたしはここから降りますけど、気をつけてね」
「あ、は〜い。それでは〜」
おばさんとわかれると、ずんずん道を突き進む。途中、 ヤマユリの実 らしきものがあったり、 キバナアキギリの写真を地に伏せて撮ってたら変な目で見られたりと、ちょこちょこあった。
はしょり気味だけど、実際、時間的にちょっと焦っていたのでこんな感じだ。
ずんどこ進んでいくと、小高くなっている所があって、道はそこをぐるっと回る感じで登っている。 2,3年前に木が刈られたのか、そこだけ削り取られた感じが痛々しい。上の方にはパラボラらしきものがかすかに見えている。 城山の頂上に到着!
登ってみると、いやにたくさんの木のベンチが並べてあって、ちょっと向こうに売店らしきものがある。 でも、とても営業しているようには見えず、つぶれてほったらかしになっているようにしか見えない。 どこからか人の声が聞こえてくるが、声はすれども姿は見えず。 向こうにいるのかな?
休憩がてら、パラボラも見に行ってみる。
「東京近郊日帰りハイキング」には「目障り」と書いてあったけど、これはこれでいいんじゃない?
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